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4月に年度がスタートするのはナゼ?

column

2021年03月17日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

確定申告がコロナ禍の影響で3月15日から4月15日へ延長となりました。確定申告とは1月~12月の収入をまとめて所得税を計算して申告することです。全国民が対象ですが会社員は年末調整で会社が代行しますので本人が確定申告する必要はありません。

所得税徴収は明治20年から

今年は「密」にならないよう国ではスマホで確定申告できると宣伝しています。このE-Tax(電子申告)が始まったのが2004年(平成16年)2月。最初の頃はジャバというプログラムをインストールし専門用語を理解しないと申告の画面にさえたどりつけないようなシステムでした。毎年、改定され今はかなり使いやすくなっています。

この所得税が始まったのが1887年(明治20年)。それまでは年貢などの、いわゆる地租が中心でしたが、これですと毎年一定の税収しかありません。明治になって商工業が発達したことから所得税を導入し、税収増を目指しました。当初は高額所得者が対象でしたので名誉税的な要素がありましたが、今は税制の根幹の一つになっています。このあと法人税、消費税と増えていきます。

確定申告は通常は3月15日に終わり、すぐに年度末を迎えます。海外赴任、転勤、退任など人事異動が内示され4月から異動します。また市町村、国の会計年度が3月末で終わり4月からスタートします。会計年度ですが所得税のように1月開始でもよいと思うのですが、なぜ4月なのでしょうか。

1886年(明治19年)から4月開始に

明治新政府が始まった1869年(明治2年)には10月~翌年9月が会計年度とされました。ただ数年後には1月~12月に変更され、その後に7月~翌年6月と変えられます。明治初旬は頻繁に年度区切りが変わっていました。4月始まりとなったのは1886年(明治19年)のことです。

4月始まりとなったのは諸説ありますが、一説に年貢の納期が関係していると言われています。江戸時代、年貢は村で集めていました。年貢(米)の総量と最終的な納期(皆済期日)が村に通知されます。お米には成熟が早い品種もありますので、米の収穫時期にあわせて数回、納入されました。

分割納入では年貢割付状(ねんぐわりつけじょう)が発行されます。徴税の命令書です。きちんと納入されると「小手形」(こてがた)と呼ばれる仮の領収書が発給されました。今でも年度末に税金をまとめて納めると大変なので消費税などは分割納入できるようになっています。毎月、給与から引き落とされる源泉徴収も同じようなものです。

年貢の皆済期日は、旧暦12月で、冬成(ふゆなり)と呼ばれていました。冬成の納期が終わって、年貢が皆済されると翌年の1月か2月に正式な領収書として年貢皆済目録が発行され、村で大切に保管しました。今でいう納税証明書です。1月~12月の所得を確定し2月~3月に確定申告するスケジュールとよく似ています。

江戸時代の人事異動は3月末

江戸時代、この年貢の完済にあわせて人事が動きました。2月に年貢納入が終わると3月5日が幕府の年度始まりとなり武家奉公人など1年契約者はこの日で交代しました。今でいうと派遣社員などの交代です。1年を超える年数の契約は年季奉公で、1年または半年契約は出替(でかわり)奉公となります。この出替奉公が交代となりました。

1679年(延宝7年)に、四代将軍である家綱から綱吉へと変わる時代にこの年度が3月5日から3月末日に変更になって、幕末まで引き継がれます。明治になった時、旧暦を新暦にしましたが、結局は3月末日をそのまま踏襲したため人事異動は4月スタートになっています。この人事異動に官公庁の会計年度をあわせたのか同じ4月スタートとなり、入学式、入社式などの行事が4月を中心にまわることになります。

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